不調の原因

身体の不調を抱えている人には共通していることがあります。呼吸が浅いということです。

呼吸が浅いと呼吸する回数も増えます。せわしなく浅い速い呼吸をしている人と、悠然と深い落ち着いた呼吸をしている人、どちらが調子良さそうに見えるかと言えば当然後者です。

何らかのトレーニングのためにあえて浅く速い呼吸をしているなら別に問題ないのですが、日常何もしていない時に浅く速い呼吸の人を見ると「大丈夫かな?」と心配になります。浅く速い呼吸は見た目も苦しそうですし、実際に苦しいです。

呼吸が浅いというのは取り入れる酸素が少ないわけです。これがさらに少なくなっていくと息が止まるということになります。

試しに息を止めてみましょう。

・・・

徐々に苦しくなりますね。

・・・

身体も色んなところが力んできますね。

・・・

立ったり座ったりなど好きに動いてみましょう。

・・・

どんどん苦しくなりますね。

もう楽にして大丈夫です。

息を止めていた分、吸いたくなりますね。存分に呼吸して下さい。

気持ちよく吸って吐きましょう。

息を止めると身体は勝手に力みます。息が止まる時間が長ければ長いほど力む場所は増え、力みの程度も強くなります。

息を止めないまでも、マスクをするなどして呼吸しづらい状況にすれば、マスクをしていない時よりも身体は力みやすくなります。

息を止めたり、呼吸がしづらい状況で動くと身体の力みはどんどん増していきます。

さて今度は全身色んな部分を一斉に力ませてみましょう。

力んだ状態のまま、大きく息を吸って、吐いてみましょう。

どうでしょう?当たり前ですが先ほどのような気持ちよく吸って吐ける呼吸はできませんね。

力むと呼吸は浅くなります。

人間は一定の身体の状態を長く続けると、そこに応じた身体に変化しますから、息をしづらい、呼吸が浅いという状況を沢山作ると、呼吸が浅いのが当たり前の体になってしまいます。呼吸が浅いのが当たり前になると力むのも当たり前になります。ここから、呼吸浅くなる→力む→さらに呼吸浅くなる→さらに力む→呼吸が・・・というループが始まります。

日常の動作は1日20000回くらいと言われていますから、全体の1割くらいを息止めたり、浅い呼吸の状態で動いたとしても1日1000回の呼吸と力みのループの積み重ねが起こります。これが毎日続いたら?ということです。

そんな状態で動いていたら関節も痛めやすくなるでしょうし、血流も悪くなるし、内臓の働きも悪くなるし、というのは容易に想像できます。それだけ全身の働きが悪くなればメンタルも安定はしないでしょうし、自律神経の働きだって悪くなります。

大方の身体の不調は日常の中に原因があり、それは何気ない動作の中での呼吸の浅さや力みの積み重ねだということです。

日常の動きの中では長く続いたものは当たり前のことになっていくので、身体の力みが続いていくとそれが当たり前になり、力んでいるという認識は薄くなります。つまり自分の力みには気づきづらいということです。

呼吸が浅いのも気づきづらいですが、息が止まるかどうかは観察していると割と分かります。

一時的な呼吸の浅さや力みであれば、睡眠によってある程度リセットされますが、寝不足が続くとリセットできなくなりますし、食べ過ぎなどによる内臓からくる力みが加わると、いよいよ大変です。

それに加えて社会生活の中で人間関係のストレスからくる力みなども入ってしまうと、完全にとっ散らかってしまって、健全な自分の状態など分からなくなってしまいます。

身体が不調を出すくらいの状態になる頃には、呼吸が浅く、力んでいる状態が当たり前になっていて、何が原因で呼吸が浅いのか、力んでいるのかなどは分かりようもないわけです。

であればこそ、定期的に治療を受けるなり、セルフケアやボディワークの実践によって、自分の身体の状態を整えていくことが必要になるわけです。

人間にはもちろん自然に身体を調整する機能が備わっているから一切何もしなくても大丈夫だという意見もあるでしょうが、それは自然環境の変化に100%身を委ねた場合の話です。

日の出とともに起き、日が暮れれば眠り、空腹になれば必要なものを必要なだけ食べ、余分な活動は一切せず、ただただ生命を全うするだけなら何もしなくてもいいと思いますが、実際には朝寝、夜更かし、食文化も楽しみ、娯楽も嗜み、そうした生活を謳歌するために自然のルールに抗って成立しているのが現代の社会ですから、やはりそれなりに調整の方法が必要になるということです。

実際に定期的にメンテナンスの治療をしている方や、セルフケア、ボディワークを継続されている方は、体調が崩れたり、不調が出たりという頻度は低く、出てもその程度が軽いので、割とすぐにいつもの状態に戻って、何もないのが当たり前のように生活しています。

何もない、普通に、の裏側には実はそれを維持するための働きがあるというのは社会の中で働く人達を見れば分かることですが、人間の身体も同じということですね。